青人草

あの日
長い橋を渡っていた
知らない多くの人びとが
長い列を成し
想像上の
現実の
渦にさらわれて
帰り道を
歩いていた



どこか遠く
港の一角で
消せないろうそくのように
火が上がっていた
知らない多くの人びとと
長い列を成して歩いた
その姿が まるで


その夜
見えない黒い
煙の中で
丸くなり
震えながら
歴史の歯が
どこかで重なる
音を聞いた
それから
僕らは
万人の あらゆる人びとの
無事を祈った


ずっと忘れていた
歴史があることを
昨日と同じ今日を食み
生も死も誰かのせいにして
それで
毎日をやり過ごせるし
歴史を 降りられるのだと
思い込んでいた
だけど
僕ら ただ
一介の青人草
どんな絆もがんばりも
むなしく
勤勉な歴史の歯の上に
否応なく
織り込まれてしまう
という時もある
そうして
何物にも遮れない
溶け落ちた心を
抱くことも ある


その日
丸くなって
地面のように震えながら
万人の
あらゆる人々の
無事を祈った


その日
生まれた赤ん坊から
年老いた
電力会社の社長まで
万人の あらゆる人々の
無事を祈った


そうした 万人の
あらゆる人々を
助ける手だてが
あるのを信じて
その姿が
まるで